第2回は「東塔の技」です。
【第2回「東塔の技」】
東塔は薬師寺創建当時より現存する三重塔で、各層の大屋根の下に裳階(もこし)を付けているため、一見して六層に見え、羽を広げた鳳凰が連続して舞い上がる姿を思い起こさせる壮麗な構えは、白鳳時代を象徴する威容を誇ります。
東塔の組物を建築史の形式では三手先組みといいますが、大屋根の深い軒を支える機能面のみならず、塔全体に伸びやかな優美さを響かせる役割も担っています。内陣には心柱がそびえ、白鳳文化の精華を守っています。
■裳階
三層の東塔を一見して六層に見せているのは、各層の大屋根の下にある裳階が構造的・視覚的に機能しているためだといわれています。裳階とは、本建ち(本屋)の周りに造りつけた部分を指します。東塔の裳階は仮設的な構造物ではなく、本建ちと一体化し、裳階を有する他の塔に比べて柱高が高くなっています。
また、柱の太さや間隔についても、二層・三層にやや細めの角柱を用いるなど、各層にふさわしい繊細な設計が採用され、それによって構造上も外観上も親しみやすい整ったプロポーションに見せています。大屋根と裳階が織り成す大小繰り返しの調和は、我が国随一の仏塔の誉れといえるでしょう。
■組物
東塔は細部にも神経が行き届いています。そのひとつが軒を支える組物です。東塔の組物は手先が三段階あるため三手先組みといわれます。斗(ます)と肘木という別々の部材を組み合わせることで、まとまりのある軒構造を形づくり、深くて重い大屋根の軒を支えることができます。この頑健な三手先組みがなければ、東塔の大屋根がこれほどまでの壮麗さを見せることはなかったでしょう。
■鬼瓦
各時代で葺替が施され、古代の瓦は全体の一割ほどですが、軒先に見える美しい文様、威厳ある鬼瓦など、創建当時から受け継がれる意匠は、薬師寺の歴史、白鳳の文化を物語る生き証人といえるでしょう。
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