第1回は「東塔の美」です。
【第1回「東塔の美」】
写真提供:一般財団法人 奈良県ビジターズビューロー
東塔は、金堂の南側に東西二基の仏塔を配置する薬師寺式伽藍を構成する一基です。天平2年(730年)建立と伝えられ、各層に裳階(もこし)という構造物を持つ特別な形の三重塔です。
随所に時代の粋を結集した美と技が施され、仏塔としての価値だけではなく、美的観点からも優れた建造物といえます。東塔の美が際立つ箇所を3つ、紹介します。
■相輪
三層より上の突出部を相輪といいます。塔の中心に立つ心柱の屋根の上に突き出た部分を金属製の管で包み、最上部より順に、宝珠・龍舎・水煙・九輪・請花・伏鉢・露盤があります。
東塔相輪の特色として、先端近くの水煙の美しさ、総高約34mのうち約3分の1を相輪が占めることなどが挙げられます。相輪のうち伏鉢はお釈迦様のお墓の形を表す重要な意味を持ち、造形的には全体の印象を引き締め、個性的に見せています。
■水煙
水煙は相輪上部に配した透かし彫りの飾りです。各地の仏塔相輪に見られますが、薬師寺東塔の水煙はとりわけ流麗・動的な美しさで知られます。
鋳造製の四枚からなり、それぞれの片面に3人の天人が天衣を翻して飛翔する様が描かれています。上方の一体は両足を揃え、花びらのようなものを持ち、中の一体は一方の脚を曲げ、花かごらしきものを持って、ともに頭を下にして舞っています。下方の一体は片膝をつき、目を閉じて横笛を吹いています。
天人が飛雲の中を軽快に舞いながら、伸びやかに「天上の音楽」を響かせているかのようです。明治時代に来日した美術史家のアーネスト・フェノロサは東塔を「凍れる音楽」と表現して、その意匠美を称賛しました。
■初層天井
初層内陣の組入天井や裳階部分の垂木間には、その隙間を埋めるように、奈良時代の彩色法による宝相華(浄土に咲くとされる想像上の花々)がびっしりと描かれています。白土で下地を塗り、青・緑・赤・黄などの顔料を使って、同系色の濃淡を繰り返して層をなすように塗り込む繧繝(うんげん)彩色が鮮やかな世界観を作り出していたことでしょう。
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