とはいえ、階段が延々と続いているのを見ると、根負けしてしまう人もいるでしょう。しかし、踏ん張って上った先に思いがけない光景が待っていたり、振り返って高さを実感したり、眼下に広がる景色を眺望したりして、感動を味わえるのは階段のおかげです。
この記事には、奈良県にある上り下りしてみたい階段を集めました。目的地に導いてくれる階段に感謝しながら、足腰と体力が許す限り、階段の妙味を味わってください。
【五十二階(奈良市)】
猿沢池から興福寺へ上がるところに、52段の階段があります。「52」には意味があり、仏門に入るための修行の段階を指す「菩薩五十二位」に由来します。ということは、この階段は下って楽をするより、体にかかる負荷を修行であると思って、悟りを得ようと念じながら上ることに価値がある階段だと言えそうです。
【白毫寺の参道(奈良市)】
奈良時代創建と伝わる古刹。奈良公園の東、高円山の高台に境内があり、そこに至るには石段をのぼらなければなりません。初秋には萩の花が石段沿いに咲き、これを目当てに参拝する人も。ようやくのぼったところで、振り向いてください。奈良市の眺望が、広げた両腕に収まらないほどのパノラマで広がっています。
【長谷寺の登廊(桜井市)】
“花の御寺”と親しまれる長谷寺は、『枕草子』『源氏物語』など古典文学にも登場する名刹です。399段ある登廊(上中下の三廊)が有名で、木製の柱や屋根の渋さを味わいながら、高さ10m超もあるご本尊十一面観世音菩薩立像がおられる本堂へ。本堂の舞台からは、ここまでのぼってきてよかったと思える風景が広がります。
【宝山寺の参道(生駒市)】
様々な現世利益を授かろうという人々の信仰を集める宝山寺。生駒ケーブルで「宝山寺」駅まで行き、駅から境内まで歩くだけでも「階段をのぼったなぁ」と実感させられますが、ケーブルカーに乗らずに近鉄生駒駅前からのぼっていくと(宝山寺駅まで標高差146m)、階段好きにはたまらない“段数と距離”を味わえます。
【室生寺 五重塔に至る階段(宇陀市)】
女人禁制だった高野山に対し、女性も参拝できた室生寺は「女人高野」と呼ばれ、日本遺産に認定されています。国宝の本堂(灌頂堂)隣にある急な石段の上にそびえるのは、こちらも国宝の五重塔。取り囲む樹林の緑色と塔の朱色のコントラストが鮮やかです。その光景は、石段とセットで塔を見上げてこそ心に刻まれます。
【脳天大神龍王院の参道(吉野町)】
頭部の守護神・脳天大神を祀り、頭の病気快癒や学業・試験などの願いが寄せられます。金峯山寺の塔頭で、参拝者の多くは金峯山寺境内から続く石階段を下って脳天大神に向かいます。行きは下り、帰りは上りの石階段は見るからに急峻。願い事をした人が階段のきつさに耐えているのか、脳天大神様が見ているかもしれません。
【大峯山(山上ヶ岳)登山道(天川村)】
登山道を歩いていて、「ここに階段を普請してくれてありがたい」と感謝したことはありませんか。標高1719mの頂上に至る登山道は、修験者が多く歩きますが、ここにも木製の階段が随所に普請・整備されています。実際に歩きやすく、階段があるのと、ないのとでは、登頂率や疲労感に大きな差がありそうです。
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