【参考】『大日本名所図会 第1輯 第3編 大和名所図会』(大正8年)(国立国会図書館)
31.耳成山(巻之六)(関連スポット:奈良県景観資産「耳成山を映す古池」)
耳成山で遊山を楽しむ人々が描かれています。耳成山自体の山容は描かれておらず、遠景に見えるのは、形からして右が天香久山、左が畝傍山でしょう。耳成山とあわせて大和三山が意識されています。耳成山は標高139m。大和三山では最も低く、挿図に描かれているように、振袖姿でも、羽織帯刀でも、気軽に遊山できたと思われます。
振袖姿の4人の女性、右端のすねを丸出しにした男性が鑑賞しているのは、くちなしの花。右上に「山中に梔樹(くちなしのき)おほし。このゆえにくちなし山ともいふ」と記されています。本文にも「(耳成山は)四面田野にして、孤峯森然たり。山中に梔(くちなし)樹多し。因て又梔子山(くちなしやま)と呼ぶ」と紹介されています。
くちなしの花は6月~7月に開花します。女性たちも、扇子越しに女性たちをチラチラと覗き見ている「花より女性」のサムライも、厚着のように思えます。左右端の2人は裾をまくり上げて、いわば「半ズボン」状態。こうした姿の人物をあえて登場させることで、着こなしにこだわる身分・立場、そうでない気ままな身分・立場があったことを読み取らせてくれます。
耳成山の西麓に、「今水涸れて名ばかりなり」の「耳梨池」があり、大和名所図会はこの池にまつわる伝説=万葉集に記された悲恋の物語を再録しています。
「むかし女ありけり。名を鬘兒(かつらご)となんいひけり。」と始まる物語。なんでも男性3人が鬘兒を巡って恋争いをしており、そのことに心を痛めた鬘兒は「我身一つ消えなんは露よりもかろし、三人の男の心和平げがたきは石の如し」として、耳梨池に身を投げた-という切なく、やるせなく、何もそこまでと言いたくなる伝説です。
(俺たちが争ったばかりに…)と厚顔甚だしく嘆いた男3人の悲しみの歌が万葉集に収められています。
施設名 | 『大和名所図会』今昔めぐり 31 耳成山(巻之六)(関連スポット:奈良県景観資産「耳成山を映す古池」) |
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住所 |
〒634-0004 奈良県橿原市木原町
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